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昭和村のこんにゃく工場の教えを乞う [こんにゃく]

すっかり前記事の続きです
完全に「興味が無い人には全く興味がない」
という話すぎて引かれる勢いだけれど
分かる人にだけ分かれば良いエントリです


果たしてこんにゃくの文献というのは
どのように探せばよいものか

そして、横浜市と友好交流協定を結ぶ
昭和村のHPから昭和村のこんにゃく芋の紹介
てところがあったので見て見たら
ここはまた「水でミキサーにかける」と言っている!!

よく60度~70度のぬるま湯で、という記載があるのは
一体何であるのか? このお湯の根拠について
誰も何も解説していない

多種多様な作り方があるものの
極めて家庭的で
科学的な根拠が記載されているものがない

よーしこうなったら問い合わせてみよう、そうしよう

お問い合わせ、っていうところから
質問を出してみました

<質問した内容>
① 一般的に「60度ぐらいのぬるま湯」
 という記述が多いが、ぬるま湯を使う理由は何か?

② のりかきの際に加熱する方法と
 加熱しない方法があるようだが、この違いは何か?

③ 芋を茹でて作る場合、茹で湯が冷めた時に
透明の厚い膜が張るのは、グルコマンナンか?

④ ③だとすると、茹でた芋をミキサーにかける時の
ぬるま湯はこの茹で湯を使った方が良いのではないか?

⑤ 擦った芋と水を合わせてから放置する場合と
放置しないレシピがあるが、放置の目的は何か?
 (グルコマンナンに吸水させることが目的
  とするのであれば必要な時間はどの程度か、
  また吸水させることによる体積の違いはあるのか)

⑥ ⑤について、放置せずに炭酸ソーダを混ぜた場合は
  食味の違いとして明確にあるのか?

⑦ お湯なり火に掛けるなりというのは、
  芋のデンプン質の変性をてらったものか?
  であるとすると、
  a)水でミキシングした場合は加熱によるのりかきをする、
 b)60度のぬるま湯でミキシングした場合は
   鍋を加熱しないでも良く、タライでものりかきができる
 
ということではないか?

⑦について、私の仮説としては
水でミキサーにかけても良いが
加熱によるでんぷん質の変性が必要である。
しかし熱いままでは炭酸ソーダを均一に混ぜるのが難しいため
のりかきで加熱をした後、ある程度は
熱が冷めてからでないと手を入れられない。
→炭酸ソーダを混ぜるためにはヘラでなく手が望ましい。
手を入れられるようになるのがギリギリ60度である。

ということではないか?

つまり、生のまま擦った芋のデンプンを
変性させるためには60度では不足であり
「茹でた芋を使うなら水でミキシングの後
非加熱でのりかき」でもOK
「生の芋を使うのであれば水でミキシングして
加熱してのりかき」が必要

ということではないのか?と思う

加熱が不足している場合は
(水でミキシングしてのりかきも非加熱の場合)
食味に変化はあるのだろうか
←どうせ最後に茹でるのであればそこで加熱されるから
デンプンとしても変化する…??

と思っているけれど、私が調べた範疇では
根拠が見当たらなかったのだけど
文献の紹介等あったら教えていただきたい

というような内容で送ってみたら
役場の方から返信が来て
「役場で応えられるような内容ではなく
昭和村にある工場の方が直接お話くださるようなので
電話してみて」という内容でした


電話してみましたよー

(電話のあとにもメールでもいろいろ伺って
ブログへの掲載許可もOKだったので加筆修正)

伺ったのはくろほのこんにゃく
工場長さんが親切に教えてくれたんだけど
「おっしゃる通り、各家庭で様々な作り方があり
みんなそれぞれ、それを食べて育っているので
『うちのこんにゃくが一番』であると思っている。
カレーみたいなもんです。」

工場長、なかなかNICEなコメント

そして工場では水で溶いているらしい
加熱する理由としてはやはりデンプン質の変性を
目的としていて、熱が加わることによって
マンナン粒がしっかり吸水して
擦り残しがなく滑らかになるのだそうで
いきなり①②⑦解決

あと③の膜についてはちょっとわからない…と
言われたものの、グルコマンナンというのは
水より比重が重いはずなので沈むのではないか?
膜として表面にあったのであればマンナンではないか?
(グルコマンナンというのはグルコースとマンナンが
繋がった多糖類)

④については生芋を茹でた後は
シュウ酸カルシウムが溶け出ているので
この茹で湯は使わない方がよいのではないか
(だがしかし非加熱の生芋をミキサーにかけた場合は
シュウ酸カルシウムごとミキサーにかけるのであるから
どうなんだろ)

⑤⑥の放置時間については、放置すると水を抱き込む
という特性があり、これが水の量や温度が
その日によって違うので、職人技と言われるもの
放置時間が長すぎても保水の反対に離水が起きる
ので注意が必要

そんなわけで今回バットの大きさが
大きいものを必要としたというのは
保水力がアップしてパチッと硬めになったので
私が300ml程度の水を追加したことが原因ぽい


てことでした

あ~~解決~~~


昭和村と同時に東京にあるこんにゃく協会に
同じように問い合わせをしてみたけど
全然、なんの返答もなかった
ら、翌日返答が来たので下に追記

オットは呆れて
「きっとこんにゃく協会の人だって
ビックリしてるよ!」そうかなぁ

「そんなに各家庭によって作り方が違ってるのに
それぞれ美味しい美味しい、って言うからには
美味しいものに理由なんかないんだ。
'そうした方が美味しいから' それだけだ」

とか言うのだけど絶対違うと思う

自分の好みというおいしさがあって
そこには「こういう切り方をすると
味がしみ込みやすいから」とか
「このほうが断面が均一なので
余計な味を吸い込まないから」
とか、好みの理由があると思う

自分が好きなもの、嫌いなものには
絶対その理屈があるから、
好きなものを作っていく上では特に
より自分の好みにするには
どうやって工程を踏めばよいか
というのを追求できるんだと思う

あとは伝承されるときに
ちゃんと根拠を伝えることができるかどうか
「そう教わったから」とだけ漫然と作業していたら
手順の安全性も合理性も進歩しない

芋だって農家が一生懸命品種改良して
育てやすくておいしい芋を作っているのに
作り手が「昔からこういう作り方だから」
ってのもねぇ


工場長さんは「芋は茹でないでも
冷凍保存ができますよ」と教えてくれた
丸のまま冷凍というのはネットショップで
見たことがあるけど、スライスして冷凍は
どうなんだろう…と思ったら
スライスして真空パックで冷凍でOKらしい

へぇぇー

冷凍するメリットとしては
「経験則ですが、冷凍した芋の方が
硬い破片が残らず、細かく擦れて擦りやすい」
ということです

そして、明治神宮の大嘗祭の当日祭で
工場長の弟さんが農産部門で賞を受賞して
こんにゃく芋を奉納されたそうですよ
すばらしいー


秋にしか収穫されないこんにゃく芋
…冷凍だな ニヤリ


冷凍庫についてはまた次回

えっ


----11/12追記----

今日、こんにゃく協会と
もう一つの製造会社から返信がありました

もう一つの製造会社からは

①お湯を使う理由
→水よりもぬるま湯を使用すると
グルコマンナンが水を含みやすく、
早く粘りが出る

熱湯の使用では粘りが出過ぎてしまう
水でも問題はないが時間がかかる

凝固剤と混ぜるタイミングが遅れると
糊ダレといって、粘性が落ちてしまい、
こんにゃくにした時に柔らかいものが
できてしまう

②のりかきの際の加熱・非加熱について
→どちらでも問題はない
芋を加熱せずに生ですりおろした場合
その後の加熱が十分でないと
こんにゃく自体が赤っぽく変色することがある

③透明の膜について
→グルコマンナンやでんぷんを含むアクではないか

④③芋をミキサーにかける時のぬるま湯は
この茹で湯を使うのは
→アクが含まれるので使わないススメ

⑤放置時間について
→食感が変わるのでお好みでOK
放置した方がグルコマンナンが水を含んで滑らかになる

ということで、やはり生ですりおろした場合は
のりかきの段階で加熱するのと
その他、昨日の会社と私の想定とだいたい同じ
(ただ、③④については私はもう少しツッコんで
作ってみたいところ)

でした。


しかし! こんにゃく協会は

①お湯を使う理由
→のりかきの前に関西では芋を蒸して砕く方法を、
関東ではおろし金で砕く方法がとられていたようで
お湯を使うのは関西の作り方の名残りかも

へぇ

そしてそのほかについては
その理由を知りたいんだけどなぁ、っていう
「製法は様々で根拠はよくわかっていません」
との回答だったのでややガッカリ
(唯一、グルコマンナンの吸水は30分程度
って具体的な数字がきたけど
昨日の会社は4時間て言ってたし、
やっぱりわからないないなぁ)

でも参考文献を紹介してくれた
こんにゃく協会が教えてくれた文献

絶品 手づくりこんにゃく―秘伝わら灰こんにゃく、糸こんにゃくから、精粉こんにゃくまで

絶品 手づくりこんにゃく―秘伝わら灰こんにゃく、糸こんにゃくから、精粉こんにゃくまで

  • 作者: 永田 勝也
  • 出版社/メーカー: 農山漁村文化協会
  • 発売日: 2006/10/01
  • メディア: 単行本

こんど読んでみよう… 
って、レビューを読んで怯んだわ!

(そして微妙に高いじゃないのよ)


同じ質問をしても
それぞれ見解が分かれるぐらい
こんなに検証されていない食べ物って
他にあるのだろうか

どっかの農業大学とか栄養大学で
学生が論文書いてそうなもんだけど

あ~~そういう設備のある大学で
研究したいよぅ


----追記

岡山大学がアツい!
論文をいくつか出していて鼻息荒く読みました
←仕事の論文は途中で寝るくせに



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コメント 8

kou

美味しいコンニャク作りへの追求、素晴らしいです。
>カレーみたいなもんです
この回答は本当にniceですね。家のカレーはいつもスープ系で苦手なのですが、自分はドロドロのカレーで育ってきたので、いつもカレーでプチ喧嘩になります(^_^;)
by kou (2019-11-12 07:36) 

よいこ

お料理って理科とか数学の世界だなって時々思います
私はそれらが苦手だったのですが、より手抜きで美味しく作ろうと思うと、理科の実験のように仮説を立てていろいろ試してみるし、疑問を持つことが大切だなって思います
ツケモノさんも同じ世界の住人さんだなと感じます
蒟蒻作り興味がありましたが、たくさんもらっている人がないとなかなか手を出せない世界です
by よいこ (2019-11-12 11:50) 

ryang

kouさん
またしてもこのしつこさ! ですが、意外なのは
オットが自分の見解や疑問を述べてきて
家で「こういうことではないか?」という会話が
成り立っている不思議さです 笑
カレーの例え、面白いですよね^^
by ryang (2019-11-12 22:51) 

ryang

よいこさん
そうですねー
科学的な根拠というのがあって、その理屈が
自分の味覚に合っているかどうか、というのが
好みであると思います。
〇〇だから△△になって、これが好みである
はたは、だから嫌いだ。というものです。
理屈を理解すると応用も聞いて、アイディアも
ひらめくこともあります。

こんにゃく芋、ネットでも買えます。
芋はジップロックに入れて冷凍できますし
300gで作れば家ですぐ消費できる量でできますよ^^
by ryang (2019-11-12 22:55) 

yes_hama

うへぇ・・・私の苦手な化学の世界。。。^^;
でも、いろいろ追求していくと(基本を理解していると?)考え方に広がりが持てるかもしれませんね。^^)
by yes_hama (2019-11-14 00:44) 

ryang

yes_hamaさん
そうなんですよ
私も苦手な分野ではありますが、台所の化学となると
お⁈ 面白いぞ...てなります
学問的に追求していくと、より理屈がわかって
狙いが定まってキター!て楽しくなります^^
by ryang (2019-11-14 20:11) 

のらん

すごい!!! コンニャク道、邁進!!!
あぁ、どこかの研究所で研究させてあげたい〜
by のらん (2019-11-16 14:35) 

ryang

のらんさん
邁進、突進です 笑 
ほんと、こんにゃくは謎いっぱいです
by ryang (2019-11-17 23:34) 

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