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サービスは難しい [その他]

サービス提供についての講義を受けていて思ったこと。

看護サービスとは何であるか、という話。

日本では「おまけ」「+α」的に扱われている言葉ですが
それぞれの職業人がその職務を当たり前に成し遂げることが
サービスではないか。と、看護は一人でできるものではないので
組織として良いケアを提供していくためにどうするか、などなど。

...ナイチンゲールは今さら振り返るとものすごいこと言ってるんですね。
いろんな論でナイチンゲールが登場します。

組織とか統計なんかも強くて、つまりナイチンゲールの対象者は
めちゃくちゃ多くて、それこそ「全ての人」を対象に視点をおいてるから
初めから「一人でやる」なんて考えてないのでした。

ベッドサイドで慈善活動をした人でしょ~? ぐらいにしか思ってなかったので、反省。


で、+α的なところで体験したサービス、なにかありますか。と振られました。
私は指されなかったのだけど、リスクの高い手術前の面会だとか
ペットのことだとか、それぞれ皆さんの<提供した体験>をいくつか聞きつつ、
思い出していました。<提供できなかったこと>を。

10年近く経った今も、心に引っかかり、残っていることがあります。


そのとき勤務していた某病院の師長は、かなりの激情型で、
「管理型」と言う人もいましたが管理というか
他人のコントロール・支配を当たり前にする人(実母型)でした。

たとえば、研修レポートなんかは提出すると赤ペンで一字一句直され
翌日直して持って行くと「この日本語はおかしい」 ...。 ある意味自分に厳しい。
時間を置くとまた「おかしい」と言われるので、師長の赤ペン修正後に
間髪入れずに直して出すと「よく書けてる」  ...。

言うことを聞かないと「アンタ」とあんた呼ばわりされて徹底的に糾弾され
気が触れたように大騒ぎされて手が付けられなくなるので、みんな思考回路が
ぶった切られ、「考えるな。考えると心を病む。」が合言葉のようになっていました。

そのうち、50才代の患者さんを担当する機会がありました。
厳しい告知を受けた奥さんと本人は、残された時間が少ないと考えて
(パッと見た感じそんなに危篤感はなかったのだけど)、
本人がいつも通っている教会の牧師さんを連れてきました。

奥さんに「最期のお祈りをしてあげてほしいんです」と言われた私は困りました。
部署は原則家族以外の面会は禁止、小児も入院患児以外は入室禁止なのです。

でも、父がクリスチャンである私は、(実際父が危篤と言われた時も
ベッドサイドに牧師さんが来てくれた、と言っていたし)やはり信条とか宗教とかは
その人を支えるものであるから、そうしたいならしてあげたい。と思ったのです。

その師長には規律と、どんなことでも事前の報告が絶対でした。

「ハァ?! ダメに決まってるだろ、そんなもん!」と、まずキレました。
「日本だって、坊主が来るのは死ぬ間際って決まってんだよ! 」
急な豹変ぶりと口汚さに唖然としました。

あげくに「アンタ、よっぽど前の師長さんの教育が悪かったのね!」
そんな...と思いましたが、そこで師長の理解を得るだけの知識も知恵も無ければ
食い下がるだけの勇気もなく、そして戦い方を知りませんでした。

...。

奥さんに、本当に申し訳ないのですが...と入室の規則があることを説明すると
奥さんは「わかりました。」と小さい声で返事をして、本人のところに戻りました。

そういうことで良いのだろうか。ターミナル期の人の要望をかなえてあげられないのと、
クリスチャンのお祈りがダメと言われたのと、前の師長が云々なんて言われたので、
悶々としていました。

しばらくすると奥さんがナースステーションに来て
「先ほどはありがとうございました。牧師さんは私がお通しして、
さっとお祈りしていただきました。」と言いに来られました。

「誰が入っていいって許可したの!! 始末書よ!!」 (←そんなばかな)

ハッと振り返ると師長の鬼のような形相がありました。

そして師長は奥さんを連れて別の部屋に行き、
廊下にもれ出てくるのはキャンキャンとした声で奥さんに対する攻撃でした。

奥さんは涙目でしたが、「でも、私は最期に牧師さんに会わせてあげられて
良かったと思っています。」と言って、余計に師長の怒りを買っていました。

その後も「あの奥さんは分かってない。病棟で布教活動をさせるなんてありえない。」
と怒り心頭の師長に、お祈りは布教活動ではありません。などと言える勇気は
ありませんでした。

結局、その患者さんは2日ももたずに亡くなりました。
医師も「えっ、ちょっと早い。」と驚く急変でした。
亡くなった日は担当ではありませんでしたが勤務で出ていました。

私は、奥さんの顔をちゃんと見ることが出来なかったです。
申し訳ないという思いと、それを顔に出してしまったら師長にまた責め立てられる、
という思いが交差して、顔を上げることができませんでした。
患者さんとその家族の気持ちに沿った配慮ができませんでした。


今だったらどうするだろう。

今はここでのキャリアというものを積み、師長たちにも恵まれ、
現在はそれなりの権限の移譲をされています。今の師長は
「カーテンをして、入ってもらいました。」と事後で言ったところで
患者さんの尊厳を大事にし、その担当者の判断を良しとするでしょう。
(むしろ「帰ってもらった」なんて言ったら「なぜか」という指導が入ると思う。)

その他
もし① 師長が長らくその支配する師長のままだったら...
長らくつきあってる間に、完全に考えることをしなくなり、最悪に
師長と一緒になって「ダメですよ!」と言い放っていた可能性は大ですね。

もし② 今の私がある上で、支配する師長が今年からやってきたら...
患者さんの権利の尊重という意味で医療安全部門に連絡して
看護部のトップに上げてもらって判断を仰ぐ。というのも戦う手だろうしなぁ。

もし③ ②の立場だったら...
「最期の懺悔とお祈りがないまま、もし亡くなったら師長、訴えられません? 」
とか脅していたかもしれないし...。

とにかく、お祈りるできるように何らかの手段をとる知恵を働かせたかなぁ。


スタッフを支配するのは簡単ですが、そうするとスタッフは
考えない方が楽だから、自分の思考とか意見なんか持たなくなるし
それは患者さんの気持ちに沿うことをしなくなる看護師が育つということです。
なんとも恐ろしいことです。

いろんな管理者がいる中で、患者さんに最良のサービスを提供するには
自分もいろんな経験と知識を付けて、根回しして、、、って、
結局患者さんが満足できるような方法とか手段とか戦い方とか、
勉強も結びついてるんですね。

ペットの面会とか家族への配慮とか、マニュアル化されていない
+αサービスは目立つのでクローズアップされがちですが、それはあくまで
看護師が患者さんと接して患者さんの必要とするところを見極めた上でないと
成り立ちません。

「最期の面会はできたけど、おかげで感染管理上よろしくないものが
アウトブレイクしました~。」なんて本末転倒な話はもちろんダメですしね。

日々地味に、<この人のゴール><こうなったらいいな、の姿>に向けて
どこをサポートしていければ良いか。を身体的・精神的な方面から
コツコツ考えて実践した上での+αが出てきます。っていうことも忘れずに。


ちょっとまじめな話をポロリと。


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rtfk

古今東西 人類の有史以前から?
力に頼っての絶対的な支配は
組織を硬直化させていずれ滅びる・・・という話を
聞いたことがあります。。。。
サービス=奉仕ではないと思いますが
そこに心や気持ちがほんのりと存在すると
いいなぁ~なんて思ってしまいます☆

by rtfk (2012-11-13 07:09) 

ねこじたん

対ヒトの職場は 規則だけでくくることができなくて
でも 働いている以上 規則はあって…
この人だけってのもできないときありますね
師長さん 後輩を育てるのに 必死だったのかもですね
そればかりに気がいっちゃってたのかもですね
こゝろに 少しの余裕を持って働くことができたら
特別なことがなくても お客様は嬉しいかもですね
by ねこじたん (2012-11-13 07:20) 

メルシオ

何にしても規則、規則で・・・
規則が第一優先!
確かに規則は守らなければいけませんが、そこに日本人の良さである心(思いやり)があっても良いと思います。
十人十色の考え方があるので難しいとは思いますが・・・  最近、ちょっと残念な考えの人が増えたような気がします。割り切れない自分です・・・
by メルシオ (2012-11-13 07:55) 

ryang

rtfkさん
物事を柔軟な見方をしなければ、組織は凝り固まり
部下は考えることをしなくなりますもんね。
特別なことを「して差し上げる」というより、その人にとって
必要なことと、支援する術を考えるのは大事なことですね。
by ryang (2012-11-13 16:25) 

ryang

ねこじたんさん
管理って、結局「その人が去ったあと」、部署がどれだけ動けるか。
が問われますよねぇ。強引で支配するリーダーが居る間は
当然部署組織は「右向け右」で考えナシに言うとおり動けますが
考えナシなの故に、その管理者がいなくなったら崩壊します。
結局、言うことを聞かせてただけで育てられなかった。という。
教育って難しいですよね(- -
by ryang (2012-11-13 16:31) 

ryang

メルシオさん
規則や規律は大事ですが、なんのための決まりか。というところですね。
規則がガンジガラメに縛り上げてしまうと、患者さんの要望や
本当に助けてほしいことなども見えなくなって、決まりを守ることが
目的になってしまうんですね。本当は逆なのに。

ダメだこれは。な管理者もいれば、尊敬する管理者もいます。
いろいろですね(^^
by ryang (2012-11-13 16:39) 

ニッキー

サービス提供・・・相手の事をどれだけ考えられるか。だと思います。
通り一遍的な対応と相手の事を思っての心遣いのある対応では、同じ対応でも違って来ますもんねぇ。
規則第一も大切ですが、何でも例外ってあると思うのです。
それが、他の人への迷惑とかでなければある程度規則を拡大解釈するのも必要なのではないかと・・・
最近は規則だの権利だの、自分の事ばかり主張する人が多いような気がしますが、相手の事を思いやる気持ちが持てればきっとほとんどの事がうまくいくと思うんだけどなぁ。
by ニッキー (2012-11-13 21:41) 

yes_hama

遅ればせながら、ご訪問ありがとうございます。
・・・世の中のバランスを見極めるって難しいですよね。
勘違いなコメントだったらゴメンナサイ。m(_ _)m
by yes_hama (2012-11-13 21:44) 

kou

規則って難しいですね。
うちの勤務先も栄養士が決めた食べ物の持ち込み規制があります。
しかし、ご家族がこっそりとかくして持ち込むことが多々あります。持ち込む人は決まっているのですが・・。
施設に入所させているという負い目もあり、せめて好きな物を食べさせたいというご家族の気持ちは痛いほどわかるのですが、食中毒や感染症の危険も有り果物を含む生もの等の持ち込みは固く禁止しています。

ただし、持ち込んでもご家族がその場で食べさせて、残りは持ち帰るという事であれば黙認という逃げ道はありますけど・・・。
さすがに栄養士は苦々しく思っていることでしょう。
でも、私たちはサービス業ですからね!

by kou (2012-11-13 21:55) 

cassis


地方部の過疎地域では 
医療およびそれに準ずるチーム、はサービス業の自覚は残念ながら乏しいか皆無に等しい印象をこの半年で強く受けました。

苛酷な環境で内的に発生した業務ストレスは、
どんなにカバーしても
それが外的対象へ向かうパーセンテージの大きさは否めません。
(しかも内部複数員の負のコンセンサスを得ながら)

・・・病院と施設を行ったり来たりしていると
どうしてもそんな現場に居合わせてしまうことが
好むと好まざるとに関わらずあります。
身内にスタッフがいればいたで、便宜を図ってもらえる
信じられないアナクロニズムも健在です。
先端特化もさりながら地方の現実を見れば、
この先ツケモノさんが教育するであろう(信じてますとも☆ミ)
優秀なスタッフをこそどんどんと過疎地域医療に投入を・・・なんてことをしていると
ますますスタッフのストレスを増幅させるというこの悪循環。
アッチョンブリケ。│/・ω・`)/


by cassis (2012-11-14 00:19) 

tanupo

どこの職場にも問題児はいるものですが、上に立つ人がこのような人ではどうしたものか?悩んでしまうのも当然ですよ。(-_-;)
by tanupo (2012-11-14 00:34) 

ryang

ニッキーさん
本当に、その通りですね。
大きな音を出すとかお香を焚くとかいうわけでもないですしね。
知らない人にとっては「お祈り」というのが特別宗教じみている、
と思うかもしれないです。無知なおかげで出来ることも出来ない
ということがないよう、いろんな枝葉をつなげていきたいです。
by ryang (2012-11-14 16:12) 

ryang

yes_hamaさん
コメントありがとうございます(^^
なんでもバランスが大事ですね。公平性を欠いていないか、
逸脱したことがないか、の中で、生活の幅を持たせた
個人への配慮をしていきたいです。
by ryang (2012-11-14 16:13) 

ryang

kouさん
そうですね。持ち込み食に関してはうちもあります。
「何のために持ち込み食がNGであるか」を家族が聞いてくれれば
「その人のためにならない」という理解で協力してくれる場合も
多いです。
でも、病院の食事が口に合わない方も多いし、「家のご飯なら
食べられるのに」という、食の機能として食べて欲しい方には
こちらから持ち込み食をお願いすることもあります
(でもこの責任者の時はそんなことは出来なかったですけど)。

by ryang (2012-11-14 16:23) 

ryang

cassisさん
やはり、相手側からの見方を想像するチカラが足りてないなぁ、
と思います。サービスって特別なことではなくて、それぞれの
生活背景や支援する力やキーパーソンの機能やなんかを鑑みて
その人に必要とする力のどこが不足しているのか、医療側として
どのようなサポートができるか。当たり前のことなのに
「あなただけ特別なことはできません!!」とか言ってしまう風潮がありますね。

スタッフが職業人としてまっとうするために、相手の考える力を
存分に発揮して、内部・外部全ての顧客に返していけるように
なったらいいなぁと思います。

私一人の力は微々たるものですが、頑張りまっす。
by ryang (2012-11-14 16:37) 

ryang

tanupoさん
いろんな患者さんがいるばかりではなく、いろんな職員がいます(^^;
でも、おかしな上司がいたとしても、スタッフたちは戦い、
職場の環境(患者さんたち・自分たち)を守らないといけません。
そのために、自分たちの力をつけていきたいところです。
by ryang (2012-11-14 16:44) 

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